日本は自然が豊かで山川がたくさんあり、人々は、山ぎりぎりまで家を建て、畑を耕し作物を作り、見事に自然と共存している様に見えています。
ですが、毎年、熊に襲われたという悲惨なニュースが流れますね。
都市部に暮らす人達には、想像がつかないかも知れませんが、これは本当のことです。
「熊はなぜ人を襲うのか」ということについて調べてみます。
目次
熊について
ツキノワグマの起源と生息地域
- ツキノワグマは、アジア大陸から始まったとされ、西アジアから東アジアにかかる広い地域に生息
- ツキノワグマは、縄張り意識は強くないので、行動範囲はほかの同種の個体と被ることは普通
- 餌が不足すると、餌を求めて行動範囲も広がり、オスでは、おおむね100k㎡、メスでは、おおむね40k㎡の距離を移動する
ヒグマの起源と生息地域
- ヒグマは、アジア大陸から始まったとされ、北半球の広い地域に生息している
- ヒグマは、北海道全体に生息している
- 縄張り意識は強くないので、行動範囲はほかの同種の個体と被ることは普通
- 行動範囲は、メスよりもオスの方が広いといわれ、最大移動面積としての報告では、おおむね500k㎡という記録がある
人と熊との関わり
国内に生息する熊は、両方とも縄張りをほとんど持たず、餌を求めて広い範囲を移動する様です。
一方、人は山ぎりぎりまでに家を建て、畑を耕し、作物を作って生活しています。
人は熊と出会うことを望んではいませんが、熊も人と出会いたいとは思っていない様です。
その証拠に、熊は人の気配を感じると、その場を離れたり、道路を移動する時は、人々が寝静まる夜中に行動するなど、明らかに人を避けていることが分かる研究結果が出ている様です。
熊はなぜ人を襲うようになったのか?
「熊は、本当は人を襲いたくないのだ」と研究者はいっている様です。
その研究者は、「それでも熊が人を襲う理由」として考えられる可能性を挙げています。
人と突然出会って驚いた拍子に襲ってしまう
熊は、人に会ってびっくりしてしまい、怖さから「やられる前に、やる」と考えるというのです。
メスが子熊を守るための防衛手段として襲ってしまう
子熊を連れているメスは、常に警戒心が強いそうです。
メスが許した範囲を超えて人などが入ると、容赦なく襲って来る様です。
子熊に興味を持ったり、写真を撮ろうと近付く行為は、命を落とす最大の原因となるそうですから、絶対に止めましょう。
そして、それ以上の接近は、自己責任でお願いします。
邪魔な人を追い払う、または食料を奪う目的で襲ってしまう
「熊の餌場:熊の決めた範囲」に入ってしまった場合は、間髪入れずに襲って来る様です。
特に、冬ごもりの前後は、最も凶暴な状態にあるといわれていますから、見かけても、あとを追うなど、決して深入りはしないでください。
そして、それ以上の接近は、自己責任でお願いします。
イライラしている時に襲ってしまう
親離れ間もない若い熊の場合が多い傾向だということですが、「自分の居場所=餌場」が定まらず、精神的に不安定になっている場合や、精神的に育児に疲れているメス、または、過去に人と出会って危害を加えられたり、人にいじめられた記憶がある熊などは、恨みを持って襲ってくる場合がある様です。
人の側からはその事情が分からないですから、熊を見かけても決して近付かず、身の安全を確保してください。
そして、それ以上の接近は、自己責任でお願いします。
自分の力を試す目的で襲ってしまう
巣立って間もない若い熊の場合が多い傾向だということですが、「自分がどれくらい1人前になったかを試す目的」で人を襲うことがある様です。
人とふざけることが襲うことになってしまう
巣立って間もない若い個体の場合が多い傾向だということですが、単純に好奇心からじゃれ付いてくることがある様です。
体格差がありますから、熊に敵意がないと判断しても決して相手にしないで、身の安全を確保してください。
そして、それ以上の接近は、自己責任でお願いします。
人を餌にするために襲ってしまう
過去に人を襲った経験があると、その熊は「人=餌」として認識することがある様です。
この様な熊は、迷わず襲って来る様ですので、倒そうなどと思わず、身の安全を確保してください。
そして、それ以上の接近は、自己責任でお願いします。
どちらが悪いのか
人が熊に襲われた時、必ずといって良いほど最後は熊も命を奪われ、決まって「どちらが悪いのか」という議論になる様です。
原始の時代、熊が大陸を渡り日本に生息する様になった頃は、人口も少なく自然が豊かで、熊と人との住み分けができていたに違いないでしょう。
時代が進むにつれて、人は進歩し、山を切り崩し、居住地を広げ、計画的に木を植え、熊の生息地を奪っていったと想像できそうです。
そして、現在では、昔よりも頻繁に山に入り、山菜や山の食物採取を楽しむたくさんの人々を見かける様になりました。
一方、熊は、その間、人がいなくなるのをじっと待っているといわれています。
ですが、人は目的に合わせて山を移動するため、熊には予測もできない動き(複雑な動き)として感じているといわれています。
結局、熊は人をやり過ごすことができず、望まずして人と出会ってしまい、身を守るために襲ってしまうともいわれています。
1度、人の味を覚えてしまうと「人を襲う猛獣」と化してしまい、繰り返し人を襲うのだといいます。
人の命を守るために、そうせざるを得ないのだそうです。
山に餌がなくなって、熊が人里に降りてくると考える研究者もいる様です。
熊は体が大きいためにたくさんの餌を必要とします。
毎年の様に夏の山では餌が足りなくなる様で、餌を求めて、人里に下りては作物を荒らすといわれています。
そして、実りの秋を迎えると山にも餌が豊富になるために、人里に下りる熊がいったんは収まるかの様に見えるということです。
山に餌がなくなることで熊が人里に下りてくるのであれば、人が住み良くするために行っている自然に対する行為によって、「人が熊の餌場を奪っている」とも考えられるそうです。
一方、人里で見かける熊の多くは、特にやせ細っている訳でもないところに注目して、「山に餌が不足している様子でもないのに、人里に降りてくるのはなぜか」と考える研究者がいる様です。
人と熊とのこれまでの様々な関係から、熊が「人里に行けば餌が豊富にある=苦労しなくても手軽に餌が手に入る」と学習したために、人との出会いを怖いとも思わずに山を下りてくると考えている様です。
まとめ
熊が大陸から移動し、この日本に生息する様になった時には、まだ人とは住み分けができていた様でした。
人が様々な進歩を遂げる中、熊の生息地域が狭まっていった様に感じます。
人の生活やレジャーの場が熊の生息地に迫っていくと、人を避ける様にしていた熊と人が出会う機会が増えていくのは当然の様に感じました。
熊は、餌を求めて移動する内に、人の畑や餌(食料)を持った人に出会い、「苦労しなくても餌が手に入る」ことを学び、「人は弱い」と確信して、人に襲いかかってでも餌を奪う様になったと感じました。
それとは別に、「人=餌」と確信して、人を襲う熊もいることも分かりましたが、人と熊のすみ分けが崩れたことが、熊が人を襲う様になった最大の理由だと感じました。